withNOUCHI 情熱オーナー対談 Episode2 オプトの変革と事業の展望

2023.05.18
株式会社デジタルホールディングス
代表取締役社長 グループCEO
野内 敦 Atsushi Nouchi
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1967年生まれ。東京理科大学工学部を卒業後、91年に森ビル入社。96年にオプト(現デジタルホールディングス)に入社。99年に取締役に就任。2006年からはCOO(最高執行責任者)、その後数々の戦略子会社の設立・運営に携わる。13年より投資育成事業の責任者として陣頭指揮を執り、出資先への経営指導やビジネスモデル開発において、多くのベンチャー企業のIPO(新規株式公開)を支援。15年よりBonds Investment Groupの代表取締役に就任し、現在も兼務。20年3月にデジタルホールディングス代表取締役社長 グループCEO(最高経営責任者)に就任。

株式会社オプト
代表取締役社長CEO
栗本 聖也 Seiya Kurimoto
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2010年オプト(現デジタルホールディングス)に中途で入社。運用型広告のコンサルタントとして広告運用の実務に従事した後、営業部門、広告運用部門の部長を経て、2019年4月に当社執行役員へ就任、プランニング領域管掌。2021年4月より、当社代表取締役社長CEOに就任。

情熱オーナー対談とは

代表取締役社長 グループCEOの野内敦がデジタルホールディングスグループで活躍する情熱オーナー(※1)と対談し、事業の内容や取り組みへの想いをお伝えする企画です。一人ひとりが日々何を考え、どのような姿勢で事業に向き合っているのか、その真相に迫ります。

(※1)情熱オーナーとは、デジタルホールディングスグループのバリュー「5BEATS」の体現者を指す。
URL:https://digital-holdings.co.jp/philosophy/value

変わらない広告業界の構造と変化するオプトの提供価値

野内:今回はオプトの栗本社長に話を伺います。
今、グループ全体で、変革に向かって動いています。再編などオプトにも変化がありましたが、栗本社長は、オプトがグループのなかでどういう立ち位置を担っている、または期待されていると感じていますか。もうひとつ、業界内で今どのような役割、見られ方をしているか、どのような会社になっていこうとしているのかを教えてください。

栗本:オプトは現在、グループ内で最も規模・売上・収益のシェアが高い会社です。だからこそ、母体の大きさだけではなく、それが各事業の新しい投資のエンジンになっているか、新しいチャレンジができる環境を生み出せているかを期待されていると思っています。当然、社員たちは、自分たちが稼ぎ頭ということだけではなく、ホールディングスという事業体の中にいるからこそ、新しいチャレンジがしやすいと感じているでしょうし、既存の広告事業から、どのようにアップデートしていくのかを非常に楽しみにしていると思います。

野内:私は、2020年3月にデジタルホールディングスのCEOに就任しました。就任してすぐにコロナ禍に入ったため、半年から10ヶ月くらいは大きな変化を感じにくかったかも知れません。この間、業態変革の準備をしていた時期で、年が明け、オプトの事業を3分割するという話があり衝撃が走ったのではないかと思います。私はまず、広告代理店を生業としてきた長い歴史のなかで、どうして「15%マージン」というものが、あたかも法律であるかのように決まっているのかと、ずっと腹落ちしていませんでした。オプトもそのなかの代表格で、15%のテイクレートのなかで、少なくとも営業利益率を5%出そうとすると、販管費には10%しか出せないと決まってしまいます。それによって、ビジネス構造が固定されてしまうと感じていました。このビジネスモデルのままでは、オプトが価値を提供し続け、これからも利益を大きくしていくためには、規模を大きくせざるを得ません。結果的には、他の広告代理店と同じように規模の経済で勝負が決まることになります。かつ、生き残るのはトップ3だけというレースに意義はないと思い、変革を打ち出しました。現場の皆からすると戸惑いを感じたかもしれません。そこから3年が経ち、結果的には、オプトの1人当たりの生産性は上がってきていますが、今振り返って、この3年間はどうでしたか。

栗本:「広告代理」というビジネスモデルについて、私自身もすごく考えさせられた3年間でした。事業を3分割するということが決まった時に、当時は広告事業の期待値はキャッシュカウに寄っている印象を持ちました。大手顧客を競合代理店と競争しながら、表現が適切ではないかもしれませんが、血で血を洗うような戦い方を繰り返していく。何のためにやっているかと考えると、やはり自分たちの事業を大きくするため、自分たちの収益を伸ばすためという自社に寄った視点だと感じていました。ただ、一方で事業拡大のプロセスは、大手の広告主を競合と一緒に競争し合いながら奪い取っていくという戦い方だけではなく、大手以外にも多くいらっしゃる広告主に新しい価値を提供し、そこから還元された利益で、事業を大きくしていくという考え方もあって良いのではないかと思いました。

野内:広告代理店は、大手のクライアントのリプレイス合戦だとも感じます。むしろ、私たちのようなネット専業の代理店がやらなければならないことは、今までインターネットで利益を上げられなかったお客様に対して、その価値を提供することのような気がしています。私たちがインターネット広告に参入したのは1990年代後半で、本格的に代理店業界に入ったのが2000年、当時のお客様は、今で言う「スタートアップ」でした。そのようなお客様は、当時テレビ広告を出稿できなかった。でも、オプトがインターネット広告によって支援したことで、お客様の事業成長を支え、今では錚々たる大企業になっています。企業の成長を支えてきた歴史を踏まえると、本当の付加価値の創出という意味では、成長を志向する企業に経営資源を提供することが、社会全体の経済成長にも繋がると考えています。去年は大手以外の企業とも接点を多く持ち、結果、KPIもクリアしたと思います。このように、マインドが少しずつ変わってきたというのは、オプトのなかで何が起きているのでしょうか。

栗本:広告代理店の仕事や価値の提供の仕方をアップデートしていきたいと思った時に、大手の広告主との仕事で培った知見や経験を、「これから事業を成長させていきたい」お客様に還元することは、従業員のやりがいにもなり、お客様側からの評価にも直結しやすいと考えました。ビジネスの構造としても、競合と値引で争うよりも、クライアントと深い関係性を築いていくことが仕事の本質にも繋がるのではないかという発想で、中規模のマーケットの支援を始めました。

野内:取引をしていくなかで、クライアントとの関係の深さや密着度に関しては、どのように感じていますか。

栗本:定性的な面では、向き合っている広告主の方々の我々に対する期待値は、市場やクライアントの規模によって違いがあると実感しました。

野内:そのようなお客様には、今までどういった企業が、どのようなサポートをしていたのでしょうか。

栗本:広告代理店が入られているケースが多かったです。

野内:では、大手の代理店との戦いではなく、どちらかというと、もう少し小規模な代理店との戦いになっているということでしょうか。

栗本:はい。例えば、BtoB SaaSやECの業界では、広告のコンバージョンを最適化するだけではなく、コンバージョン後の事業の成果に非常にこだわりを持たれています。広告配信の最適化だけではなく、その先の事業成果を可視化し、そこを基にPDCAを回していくことを評価いただくことが多かったです。このような施策は、広告予算を伸ばすという従来の代理店側の向き合い方とは少し矛盾する面もあります。分析や可視化をして、それによって広告のPDCAを変えることは、手間も工数もかかります。しかし、そこに踏み込んでいくことが、私たち自身の提供できる価値にも繋がると感じています。

野内:もはや代理店としての機能だけではないのですね。

栗本:そうです。市場全体としても、広告を仕入れ、メディアさんの代理販売をするという構造だけではなくなってきていると思います。

野内:ここ最近、私たちのグループの共通の価値は何だろうということをよく考えます。過去を振り返ると、成長志向がある企業の売上と利益を上げていく仕組みを提供してきたと思います。ネット広告に参入し、「ADPLAN(※1)」を作り、マーケットプレイスで事業を拡大するなどいろいろやってきましたが、投資事業もIX(※2)もDXも全てに共通していることは、企業の売上を上げることに特化していることだと思いました。

栗本:クライアントと向き合う、向き合いきるということが、自分たちの付加価値であり、オプトという組織のカルチャーにとっても、すごくフィットしやすいテーマだと思います。そのため、単純に広告の予算や売上を伸ばすだけではなく、クライアントにとっての本質的な価値をどれだけ提供できるかということにこだわっていくことが、大切だと考えています。

(※1) ADPLAN(アドプラン)
オプトが開発、提供していた国内初のインターネット上での広告効果測定ツール。

(※2) IX(Industrial Transformation®)
デジタルホールディングスがデジタルシフトを通じて目指す産業変革のこと。IXを推進することで、成長志向企業の持続的発展と、 働き手の価値が正当に引き上げられる日本社会の実現を目指しています。

インハウス支援に見る日本の広告事情

野内:今、オプトはインハウスの支援を行っています。随分前からやっていますが、「お客様に向き合っていく」うえで、今後もインハウス支援のお話は増えると思っています。そうなると、インハウス支援と広告代理店は両立するものなのでしょうか。インハウスをしている会社からすると「この部分はインハウスでやるから支援してください、人件費もしくはコンサルフィーを払います」となり、それ以外にプラスで広告代理店として費用を支払う時に、この2階建て構造が成立するのかはすごく興味深いです。成立させる必要があるのかどうかも含めて、考えを聞かせてください。

栗本:去年の取引実績では、数社、その2階建て構造が成立することがありました。それがスタンダードかどうかは、まだ検証材料が足りていませんが、お客様のインハウスに対するニーズが、広告を単純に内製化したいというものと、マーケティングの機能や組織を社内で強化していきたいというもののどちらかによっても、対応は異なります。ですから、2階建て構造になるかどうかはケースバイケースだと実感しています。

野内:インハウスといっても、プロモーションだけではなく、商品サービスのプライシングなども含めてマーケティング全般を担当し、ある程度戦略が決まれば、広告代理店としてオプトがそこをサポートするという役割でしょうか。

栗本:広告の運用を内製化する目的も、広告主によって異なります。代理店に支払っているマージンをカットしたいというケースもあれば、社内で自立したデジタルマーケティングの機能や組織を強化していきたいというニーズもあります。前者の場合はなかなかお取引自体も持続しないというケースだと感じています。広告の運用リソースなどを社内で抱え込むと、一時的に社内のコストになり、長期的にまた外部に出すという結果になってしまうのであれば、パートナーとして外部に委託し続けるという選択肢もあった方が良いのではというお話をさせていただいています。

野内:ちょうど昨日、「なぜ日本は、クライアントがダイレクトにプラットフォームに広告出稿しないのか」と素朴な質問をされました。「欧米じゃ考えられない」と。面倒、ノウハウの差がある、コストを固定化することが大変などの理由を説明しても、「なぜ日本だけがそうなったのか」と聞かれました。改めて、プロモーションといえば4マスメディアが主流で、特にテレビ広告の扱いをダイレクトにできなかった日本独特の商習慣のなかでネット広告が隆盛し、従来からテレビ等に広告を出稿している企業は「代理店にお任せしないとできない」と、通常通りの流れを経たことにより、日本だけ独特な状態になったのではないかと捉えています。ただ、スタートアップ企業は、エージェンシーサポートをあまり受けていない気がします。ですから、時代が変わると、欧米と同じように「どうしてそこに代理店がいるのですか」という素朴な疑問が国内からも出てくる可能性があるでしょう。10年、20年先のことを考えると、やはりエージェンシーやマーケティング会社の役割・価値は再定義しておく必要があると感じています。

栗本:広告は、マーケティング活動における手段のひとつです。本来は、事業のサービスや商品と、マーケティング・広告活動は全て線になっている必要があります。企業、事業にとって、どのような商品やどのようなサービスを打ち出していくことが、自分たちの事業の成長戦略になるのか。その柱がしっかりとあり、それを生活者に伝えるための手段として広告を使っていくというマーケティングのサイクルをしっかり描けているところは、基本的には内製化が上手く行きやすいと感じます。逆に、事業の成長戦略のために伸ばす必要がある売上の数値目標が先にあり、そこから、事業のポートフォリオや商品・サービスの設計を考えられている企業は、先に売上を伸ばすことを先行せざるを得ず、その売上を伸ばす装置として広告を使います。その際は社内ではなく社外に委託した方が安くなるという思考を持たれているケースがあり、2極化していると感じます。
 

オプトが進める組織改革の狙い

野内:今オプトの中には、「Aセグメント」「Bセグメント」「Cセグメント」(※3)というセクションがあると思いますが、改めて今回セクションを切り分けた背景や目指しているところを教えてください。

(※3)Aセグメント:広告代理、Bセグメント:インハウス支援、Cセグメント:データソリューション・インテグレーションの3つの事業領域を指す。

栗本:広告の代理事業として、メディアを仕入れて販売するという機能だけではなく、この機能を持ちながらクライアントの事業に深く介在できるようなポジショニングを、自分たちで目指していきたいと思いから、広告代理以外の機能を事業の中に内包する方針で進めています。具体的な機能としては、「Aセグメント」が従来の広告代理事業で、「Bセグメント」がインハウス事業、いわゆるマーケティングのコンサルティングです。そして、「Cセグメント」がマーケティングアセットという、デジタルのソリューションをお客様に導入していただき、データの可視化やマーケティング活用を促進していくという3つを広告事業の柱として、目指しているゴールを実現しようとしています。

野内:それぞれのセグメントで、それぞれのお客様がいらっしゃるのでしょうか。

栗本:今はそれぞれが別々に動いていることの方が多いのですが、最終的には、それぞれの領域を循環させていく状態を事業のなかで作っていきたいと考えています。

野内:3つの提案ができる、3階建て構造ですね。

栗本:そうです。どこが上でどこが下ではなく、入口がそれぞれ異なっていて良いと思っています。Cから入ってB、Aに進むケースもあれば、Aから入ってC、Bに行くケースもあると思うので、さまざまなお客様の事業の課題や事業のステージに応じて、入り方と出方をカスタマイズできると良いと思っています。

野内:今、グループ全体としてはAX(Advertising Transformation®:広告産業の変革)を打ち出しています。AXに対しての関わり方としては、オプトはどういう立ち位置ですか。

栗本:今はまだ明確に関与するポイントを協議しきれている訳ではありませんが、ひとつヒントになるのは、Cセグメントのマーケティングアセット事業と言っている、データを可視化し、データをマーケティング活用するための仕組みを構築するところが一番近いと思っています。

野内:グループでAXの議論をする時、「なぜうちがAXをできるのか」という背景を考えると、総合マーケティングサービスをやっていて全てのノウハウを持っているオプトがあるからAXを立ち上げられるという話になります。逆に言うと、オプトがずっと元気で居続けてくれないと、AXは立ち上がらないと思っています。今はまだ直接的な関係はないかも知れませんが、オプトが最先端に立てば立つほど、AXがより加速していくと思うのですが、そういう意識は皆さんにあるのでしょうか。

栗本:これから経営チームの中でも、AXを自分たちの中で言語化できるように、ホールディングスのAXのチームと一緒にすり合わせをしていきたいと思っています。

野内:まだ明確な定義を発表できていませんが、AXは、広告代理店マージンに依存しない、新しい広告モデル・広告産業のモデルだと考えています。そういう意味では、オプトの中でもインハウスやソリューションなどで、既に始まっているのかも知れません。そのノウハウを生かして、15%マージンでしか会社を回せないという状態ではなく、新しい状態にできたら幸せになれるだろうと思っており、連携して動いてもらいたいと思っていますので、改めてよろしくお願いします。
 

栗本が考えるオプトの「成長戦略」

野内:オプトは営業利益率が上がっていて、すごく頑張っているなと思っています。「頑張っている」というのは、力尽くでなんとか長尻を合わせるというよりも、構造に合わせて組織が動き始めていると認識しています。これもよく聞かれる質問で、「収益性の改善は一定の成果が出て評価もするけれど、結局、広告代理は売上を市場成長並に伸ばさなければならないから、これからも売上をどんどん伸ばしていくんですよね」と言われます。この辺りに関しては、どの時点で再び成長軌道に乗せることができるのか、あるいは、栗本社長としては成長軌道に乗せることは考えていないのかなど、どういう絵を描いていますか。

栗本:成長軌道に乗せていきたいとは思っています。事業の規模もお客様の数も成長軌道に乗せていきたいです。昨対ですと、100+1桁台の成長率にしていますが、2024年から2026年の次の中期経営計画においては、自分たちがちゃんと成長軌道に乗って、2026年時点ではこれぐらい成長できているという状態を描きたいと考えています。

野内:その際は、事業体が大きく変わり、提供できる価値や、それに準じて課金モデルも変わっているところまで行くのでしょうか。

栗本:そこまで行けると、なお良しだと思います。少なくとも、今行っているA・B・Cの3つの事業のポートフォリオで、Aの広告代理事業をしっかり成長させると同時に、B・Cを次の事業の柱にできている状態を目指したいです。

野内:そうだとすれば、例えば2026年の段階で、オプトはどういう会社になっているのでしょう、あるいは、どうなっていたいと思っていますか。

栗本:個人的には、事業の規模を大きくしていきたいと言いましたが、市場の中で何番手かという順位そのものにはそれほど関心はありません。むしろ、ビジネスモデルや事業のサービスラインナップを自分たちから主体的に新しく構築し、それが市場から評価されることを、大事にしていきたいと思っています。

野内:オプトの社長として、グループ全体に期待していることや、こういうことを皆で一緒にやっていきたいなどのメッセージをお願いします。

栗本:オプトのクライアントはグループ全体にとっても、ものすごく重要な資産だと思います。だからこそ、グループアセットを掛け合わせた時に、このお客様に何ができるのかと、もっと解像度を上げるようなシーンを作っていきたいと思います。

野内:そういう働きかけを引き続きどんどんやっていってください。本日はありがとうございました。

栗本:ありがとうございました。