挑戦するエネルギーを多くの企業に宿したい。広告×金融でつくる、新しい世界。バンカブル 、松山が向かう先
2019年:三菱UFJニコス株式会社入社。法人向けのアカウンティング営業とクレジットカードの加盟店開拓に従事。
2020年:株式会社デジタルシフトの営業担当者として、のちの『AD YELL』となるサービスの立ち上げをサポート。
2021年:新設された法人専門の営業部隊に異動。チームリーダーとして戦略立案やチーム内の案件管理などを行う。
2022年:取引先であった株式会社バンカブルに転職。プロダクト開発とセールスに従事。
※本文は取材当時の情報です。
昨年の『New Value Forum 2022』に続きファイナリストとなった、株式会社バンカブルチーム。今年、チームの代表としてステージに立ったのは、Sales Divisionに所属する松山陽裕です。2021年まで、バンカブル社の取引先企業に所属していた松山は、主力サービスである、広告費の4分割・後払いサービス『AD YELL』の生みの親の一人にして、同社の “マイナス一期生”という存在。そんな松山が、バンカブル社にジョインするまで、そして、「New Value Forum 2023」のファイナリストとなった経緯とともに、仕事観や今後の展望について語ってもらいました。
新しい価値を生み出す「ゼロイチ」の楽しさに開眼
ーーー 社会人5年目の松山。就職活動をしていた当時は、政府が『キャッシュレスビジョン』を掲げ、キャッシュレス決済を推進し始めたころと重なります。そんなホットな市場の最前線に身を置き、さらには拡張性から選んだ就職先はクレジットカード会社でした。そこは、ゼロイチのプロダクト開発に関心を寄せていた松山にとって、うってつけの環境だったといいます。
ここでの松山の仕事は、コーポレートカードの営業です。しかし、「営業」と名の付くものの、先輩から引き継いだ既存のお客さまが担当であり、能動的な提案がなくとも成果を出しやすい環境だった、と振り返ります。
松山「個人でもそうですが、クレジットカードは一度つくってしまえば、めったなことが無い限り使い続けるケースがほとんどです。ですから、能動的な営業活動よりは、お客さまからのお問い合わせにフォーカスをし、真摯に対応していくことが重要です。一方で、これでは面白さに欠けるし、真の価値を届けていると胸を張って言えない。私は、会社で実現可能な範囲のことは何でもやろうと思っていたので、お客さまからお話を伺っては、その内容に沿ってさまざまなことを提案していました。既存営業であってもお客さまと積極的に向き合っていれば、新しい事業につながるヒントは転がっているものです。何もないところからニーズをくみ取り、イチを起こす。この取り組みは、とてもやりがいがありました」
『AD YELL』の誕生。そして、バンカブル社へ
ーーーその思いをブラすことなく仕事に取り組んでいたある日、松山に元同僚からある相談が舞い込みます。デジタルシフト社との出会いは2020年5月のことです。
松山「そこで耳にしたのは、広告と金融サービスを組み合わせた事業の構想です。法人与信がしたいという話から私に声がかかり、それならば、と既存商材を使ったビジネスモデルを提案しました。それが、のちの『AD YELL』です」
ーーーここから松山とデジタルシフト社の二人三脚が始まります。市場にはない金融サービスのため、法令から学び、解釈を協議して、ときに弁護士に相談をしたり、契約書を作成したりと、新しい取り組みに向き合い続ける日々。個人情報を取り扱う関係上、新たな事業者登録の必要に伴い、バンカブル社も設立されました。このようにして、ローンチまでサポートした松山は営業に留まらない活躍を見せ、プロダクト開発に関わりました。
松山「もちろん、前職にも法務部をはじめ、プロダクト開発を支援する企画部などもありましたが、そうした部署には頼らず、すべて自ら携わりました。そうしないことには、バンカブル社の事業スピードに付いていけないと思ったし、前例のないことに挑戦するのだから、誰もが手探りの状態です。まさに、ゼロイチに取り組む機会。我こそが、と思いました」
ーーーそんな松山の熱意も相まって、『AD YELL』は2022年5月にサービス提供がスタートします。しかし、その半年後、ライフステージの変化をきっかけに松山は出身地へのUターンを決意。退社の2週間前に行われた定例ミーティングの場で、バンカブル社のメンバーにその旨を報告します。
松山「ミーティングの終盤に『私、辞めるんです』と話したのですが、2時間後に取締役の井口さんから電話があり、『辞めるのなら、うちに来てください。代表にも話を通しました。週明けには条件も出します。考えておいてください』と言われました。その話のとおり、数日後には面談が設定されました。そのスピードと調整力には驚きましたし、そこまでして誘ってくれる熱意に自分も応えようと思いました」
ーーーこのとき、すでに人材会社からの内定を取得していた松山。急転直下の決断をしたのには、もう一つ理由があったといいます。
松山「私の祖父は二人とも事業を営んでいました。その姿を見て育ってきたので、小さいころから『将来は経営者になりたい』と考えていました。とはいえ、自分にやりたいことがあるのか、社会貢献したい分野があるのかと問われると、そこはあやふやで。だからまずは興味があったクレジットカード会社に入社しました。ただ、私が担当していた顧客は大企業ばかりだったので、経営層よりも現場の担当者と接する機会が多かったんですよね。決済まわりの課題を伺っても解決できたらベターくらいのニーズが中心で、もっと痛みの強いニーズに触れたいと思っていました。その方が、より経営の勉強になると考えたからです。企業の根深い課題といわれて思い浮かぶのは、資金調達と人材です。次の仕事を人材会社に求めたのもその理由からです。ただ、バンカブル社に誘われて思ったのは、代表である髙瀬のそばで働いたほうが圧倒的に経営を学ぶチャンスが大きいだろう、ということ。さらに、バンカブル社のサービスは企業の資金調達に関わる部分でもあり、人材会社で得ようとしていた知識や経験を積めると思えたことも決断する後押しになりました」
中小企業に付きつけられた現実を前に、立ち上がる
ーーーこうしてバンカブル社のメンバーとして迎えられ1年半。その間にはたくさんの気づきがあり、そこからは葛藤も生まれた、と松山は話します。
松山「大手向けの金融から一転、現在は『AD YELL』の主要顧客である中小やスタートアップのお客さまとお会いすることが多くなりました。そのなかで、こうした層の方々は、資金繰りや資金調達にペインを抱えていることに気付きました。金融市場は何十兆円規模といわれますが、『行き届いていない会社、必要とされている方々がこんなにもいらっしゃるんだ』というのは、入社して一番に感じたことです。
前職で扱っていたクレジットカードは、あったら便利だけれど無ければ現金でも済む話です。つまり、私はプラスアルファになる商品をずっと売っていたんですよね。けれども、『AD YELL』は企業にとって生命線です。これがなかったら倒産してしまう企業の方々がいらっしゃることに、前職との強烈なギャップを感じました。いままで触れてきた金融とは重みが違う、と強く思いました」
ーーーこの気づきが葛藤へと変わった松山は、「『AD YELL』は充実したサービスではあるものの、これだけでは救えないお客さまがいる。このままではバンカブル社が目指す思想に追いつかない現実を知った」と、口にします。そして、どのような状況に置かれたお客さまにもチャンスを提供したいと考え、支援領域の拡大に挑戦したことが、『New Value Forum 2023』のエントリーテーマになりました。
大勢が見守る最終審査の場。壇上から自分の抱く葛藤を赤裸々に語り、その解決策となる事業構想を語る姿は、場内の共感を呼びました。
松山「審査員の講評を聞いたときは、自分の今までを肯定してもらえたと思えましたし、事業化への想いもいっそう強くなりました。しかし、この事業もワン・オブ・ゼムでしかありません。お客さまのお困りごとは広告費だけに留まらないことも分かっているので、すべてのお客さまのペインにリーチしていく心づもりで、できる限りのことをやっていきたいです」
ーーーそう話す、松山は「自分たちのリソースで助けられるサービスだけを提供する時代ではなくなってきている」と、話します。
松山「たとえ、『AD YELL』ではない別のサービスを紹介したとしても、そのお客さまにとって真に必要なものであり高い満足度につながればいいと考えています。こちらの独りよがりではなく、お客さまの目線に立って寄り添うことを大切にしています」
仲間のためにも、初心忘れず志高く挑み続ける
ーーーこのコメントから、デジタルホールディングスグループのバリューである5BEATSの一つ、「先義後利」を想起させる松山の仕事観ですが、その真摯さと誠実さの源泉は本人の身近なところにあるようです。
松山「私は、バンカブル社のメンバーが大好きなんです。仕事への熱意とお互いへのリスペクトを感じられるし、いつでも圧倒的な味方でいてくれます。それに、『NO』と言われないし、頭ごなしに挑戦に対する否定もされない。本当に心地よい人たちばかりです。『New Value Forum 2023』のときもそうでした。大きな横断幕で応援してくれただけでなく、終わった後は、『登壇してくれてありがとう。勇気もらったよ』って、ひたすら感謝してもらえました。お客さまをはじめ、困っている人がいたらもちろん手を差し伸べようと思いますが、私はバンカブル社の人たちが一番に輝いていてほしい。『AD YELL』がもっと広まることで、社員みんなに還元できると思うと、頑張れるんですよね」
ーーーこうした環境のなか、「バンカブル社で経営を学びたい」「ゼロイチから事業を立ち上げたい」という思いもまた、実現できていると充実した表情を浮かべます。
松山「現在、海外のビジネスモデルにならったプロダクト開発が進行しています。まさに新しくゼロイチに挑戦する最中です。バンカブル社って新しいことを始めるとき、誰もが前向きなんです。当たり前のように自分ごと化されているカルチャーも水に合っていると感じます」
ーーー実行力と行動力、そして熱意あふれる姿で、日本の金融市場に風穴を開けようと挑み続けるバンカブル社。その志の高さは、松山の今後の目標からも感じ取れます。
松山「いまは金融市場とバンカブル社をつなぐ橋渡し役として、お客さまの生の声をプロダクトに反映し、お客さまの手助けになるサービスにつなげるよう、サイクルを回していく中心を担えていると思っています。この先もその役割を担いながら、『AD YELL』に留まらないサービス展開で事業を伸ばしていきたいです。
現在、バンカブル社は成長度をGMV(広告費総取扱高)という指標で測っていますが、『AD YELL』のローンチから9か月で100億円を突破し、2023年5月末時点では160億円に達しています。ただし、メガバンクは何兆、何十兆円の世界ですから、私の考えとしてはまずは、10年以内に5,000億円を目指していきたいですね。そうなるころには、プロダクトを推進するばかりでなく、マーケットフィットできるプロダクトを自ら開発することが、私のミッションになっていると思います。他の金融サービスにも派生していくような成長イメージを持って、バンカブル社を盛り立てていきたいです」
ーーー実現する、その日を目指して。松山の挑戦は続きます。
~『New Value Forum 2023』の舞台に立って~
まずは視聴者の一人として、皆さんのプレゼンを聞いた時に、自分の知らない世界でも主体性をもって、挑戦している仲間がいること、そしてその挑戦を評価して後押ししてくれる文化がこのグループにはあることを深々と感じました。そしてファイナリスト其々が自身の仕事に誇りを持っているように見えたことから、「負けじと頑張ろう!」と刺激がありました。
プレゼンターとして、大きかった学びは、想いや価値観など、定性的な側面も大事にしていきたいと考えがシフトしたことです。これは悪い意味ではなく、金融機関は、その特性として数字や実績を重んじます。貸したはいいけど自分が損をするなんてビジネスとしてありえません。保守的に、性悪説に則って審査するのが大原則です。そのため、審査に限らず、前職のカルチャーは超が付くほどの定量主義でした。繰り返しますが、これは悪い意味ではなく、もはや合理的且つ、バンカブルでも審査に関しては性悪説に則るべきだ、とさえ考えています。
私は何か実績や定量情報に基づいて、淡々とコミュニケーションすることが身体に染みついていました。一方、『New Value Forum』で最も強調したかったのは、「誰もがチャレンジできる世界を実現したい」というバンカブルのビジョンで、それをより伝えるため、感情や思いをむき出しにする構成にしたんです。そのため、今回の最終プレゼンは、私にとって「定量→定性」という一つのチャレンジでもありました。
結果、プレゼンを聞いた方のなかには「泣いちゃった」とか、「今までの考えが180度変わった」等、今までにないくらいの好評価をいただきました。少し傲慢かもしれませんが、「自分の言葉が人の心に届いたんだ」という実感を覚えました。そして、人の心を動かすのは、人の想いだと思ったんです。バンカブルやデジタルホールディングスグループ、取引先など、相対するすべての人の想いに寄り添ってみる。『New Value Forum』は、物事の定性面も定量面も、バランスよく大事にしていきたいと思う良い機会になったと振り返って思います。