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AIの活用で「広告」が本来持つポテンシャルを引き出したい。AIソリューション開発部率いる田中が描く未来図とは

2023.05.31
株式会社オプト
AIソリューション開発部 部長
田中 宏明 Tanaka Hiroaki
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外資系コンサルティング会社に新卒で入社後、2006年株式会社オプトに入社。SEMコンサルタントに従事。SEO部署の立ち上げ、SEM研究所の立ち上げを経て2009年にクロスフィニティ株式会社へ異動。ソーシャルゲームやポータルサイトの立ち上げに参画する。2011年に国内初のCRO(コンバージョン率最適化)サービスを立ち上げ事業化をした後、AIソリューション開発に従事する。2019年に株式会社オプトのエンジニア組織、オプトテクノロジーズに異動。2020年よりAIソリューション開発部にて部長を務める。

※本文は取材当時の情報です。

好奇心を一番の原動力に、自修自得でそのキャリアを築いてきた田中宏明。現在、株式会社オプト AIソリューション開発部 部長として、最先端テクノロジーの実践的な活用と新たなプロダクト開発に従事しています。いまの仕事について、「ヒトとAIの共創で、広告の可能性を広げていきたい」と語る田中が、これから描きたい未来とは。
 

 

広告業界に新風を吹かせるAIソリューション『CRAIS for Text』をリリース

私たちの部署(AIソリューション開発部)では、2つのミッションを掲げています。

一つ目は、R&D組織として、実践を通じ、AI・機械学習・データサイエンス活用の組織的な知見や経験値を高めること。
二つ目は、業務の自動化と顧客への付加価値提供 によって、オプトが優位性を築くための原動力になることです。

その一つの形として、この3月、ChatGPT(*)を活用した『CRAIS for Text』(クレイスフォーテキスト)を対外的にリリースしました。

これは、AIとヒトが共創して広告テキストを作成するソリューションです。まず、ターゲット、キーワード、訴求、禁止文言など、ヒトが前提条件を入力します。その情報を基にChatGPTに指示が送られ、多数の高精度な広告テキストを生成します。それらを効果予測AIによって順位付けした上で、デジタルマーケティングに精通したコンサルタントが最終的に入稿テキストを選定します。これまでヒトのみで行った場合に120分費やしていたテキスト作成にかかる時間が、『CRAIS for Text』を使うことで30分になるなど、4分の1の時間で作成でき、大幅な時間短縮が可能となります。


『CRAIS for Text』を活用することで、ヒトでは思い付かない表現ができるなど、クリエイティブの幅を広げることが期待できます。ChatGPTが介入することにより、従来の生成AIでは困難であった、業界や商品情報、訴求軸など複数の要素を考慮した、かつ自然な広告テキストの提案が可能となり、効果予測AIによって広告配信後の効果も担保することができます。

運用型広告は、「ターゲティング:誰に」「配信面:どこで」「入札:いくらで」、そして「広告制作:何を(見せるか)」の4つが要諦ですが、「ターゲティング」「配信面」「入札」は、プラットフォーム側で自動化が進んでいます。しかし、「クリエイティブ」は引き続き、広告主や代理店がプランニング・作成する必要があり、相対的に重要性が増していました。いち早くChatGPT APIを組み込んだプロダクトをリリースできたのは、アプリケーションとテキスト生成の担当エンジニアであるチームメンバーの先見の明により、一つひとつの機能を開発して組み合わせるモジュール型のツールにしていたことも大きいと思います。思い切りとスピード感を持って動けたことは大きく、おかげさまで多くの反響をいただいています。

AIについては2008年、『考える脳 考えるコンピューター』(ジェフ・ホーキンス著。原著:"On Intelligence")という本に影響を受け、以来、個人的に情報収集や勉強を続けていました。このほか、英語やプログラミングなど自主的な学びは現在に至るまで継続的、かつ意識的に行っています。こういった学びが仕事にも活かされていることを嬉しく思います。

*:ChatGPT:高度なAI技術によって、人間のように自然な会話ができるAIチャットサービスを指す。

 

Googleの検索エンジンに感動。コンサルティング会社から一転、オプト社

私がデジタル広告に興味を抱いたきっかけは、検索エンジンへの好奇心からでした。
2000年に日本語に対応したGoogleの検索エンジンは、他社プログラムとは一線を画す、画期的なものでした。それまでの主流といえば、Yahoo! ディレクトリ検索でしたが、これは「スポーツ」「ビジネス」など、トップページにあるジャンルを選び、スポーツ→サッカー→読売ヴェルディ……と進めば、やがて目的の情報に行き着くというもの。いわゆる階層型の仕様です。いまからすると信じられないと思うかもしれませんが、そんなじれったい世界がクローリング(*)やページ評価アルゴリズム、大規模分散処理などの技術によって、瞬く間に欲しい情報とつながるようになったのですから、とても感動したことを覚えています。

その後もGmailしかりGoogle Mapしかり、真新しいサービスがどんどんリリースされ、広告の領域にも検索連動型広告が登場します。ユーザーが入力したキーワードに関係する内容が表示されるこの広告はユーザーが求めている情報と近く、言ってしまえば、うっとうしくない。むしろ、知りたかった商品やサービスを知ることができます。それまで広告を意識することはなかったのですが、「こういう広告の出し方ができるんだ」と、感動したものです。

オプト社に入社したのは、転職エージェントからの紹介がきっかけです。新卒で入ったコンサルティング会社を1年で退職した私は「Googleの検索エンジンに関われる仕事がしたい」と思っていました。実は、オプト社のことは以前からなんとなく知っていました。というのも、知人にオプト出身の起業家の方がいて、その方から事業内容や働く人たちのことを伺っていたんです。ですから、「オプト社がGoogle広告に関するコンサルティング事業を行っている」とエージェントから聞いたときはワクワクしましたし、もともと親近感を持っていたことから、入社を決めました。2006年のことです。

*クローリング:プログラムがウェブサイトを定期的に巡回し、情報を取得・保存する技術を指す。

 

新規事業の立ち上げを数度経験、仲間と一緒に価値提供を進める

オプト社に入社してからは、検索連動型広告の部署から経験し、SEMコンサルタントに従事しました。その後、2009年からは、アイオイクス社とオプト社の合弁会社として設立されたクロスフィニティ社に在籍しています。クロスフィニティ社では、新規事業に携わるようになり、ソーシャルゲームの開発、各種ランキングサイトの立ち上げと運営を行っていました。なかでも、ランキングサイトはさまざまなタグを入れたり、『いいね』ができるようにしたりと、工夫を凝らしながら進める過程が面白く、試行錯誤を繰り返しながらモチベーション高く仕事をしていました。

2019年、クロスフィニティ社はオプト社とハートラス社に分割吸収されるのですが、そのとき同社にはアフィリエイト事業とSEO事業、そして私が立ち上げたCRO事業(Conversion Rate Optimization:コンバージョン率最適化)と、三つの事業がありました。CRO事業には2011年初頭から2016年10月に引き継ぐまで、5年と10か月携わっていました。いまでこそCROは広告業界のあらゆるところで扱われていますが、その概念を日本に持ち込み、サービス化したのはクロスフィニティ社が初めてです。

きっかけは、当時クロスフィニティ社の代表であった加藤(現 デジタルホールディングスCFO)に声をかけられ、合弁先のアイオイクス社が提供する『DLPO』(Direct Landing Page Optimization)というWebページのテスト・最適化ツールの概念や使い方を学んだことにあります。この流れからCRO事業を立ち上げたのですが、このほかにも他社と協業でユーザーのデータを扱ったり、入力フォームの最適化によってコンバージョンレートを向上させたりと、さまざまな関連ソリューションを探してきては組み合わせ、お客さまに提供していました。お客さまに継続的に使っていただけるよう検討した結果、利益を出せるようにもなり、組織は15人が関わる規模へと成長を遂げ、私も気づけばゼネラルマネージャーの立場になっていました。

自分一人でできることは限られていますが、メンバーと一緒に取り組み、組織をつくっていく工程、オプト社をはじめとする代理店や仕入れ先とどう付き合っていくのか、これらを一通り経験できたことは私のキャリアにとって大きな経験でした。その後、クロスフィニティ社はオプト社に再吸収されることとなり、その後、私たちはオプト社のデータインテリジェンスチームに合流、AIソリューション開発部と名を変え、いまに至りますが、この時の事業を一定の規模まで伸ばせたことは、成功体験として強く印象に残っています。

取材カット

先人たちが残した知恵を使い、アップデートし続ける

キャリアを振り返って思うことは、当グループにはさまざまなお客さまのニーズと真摯に向き合ってきた歴史があることです。その結果として得られた知見や、我々の文脈でいう「データ」があるのはとても大きなことです。しかし、データがあっても使える状態になっていなければ無用の長。そうならないよう先輩方がさまざまなツールをつくり、社内で使える状態にしてきた過程は、本当に意義のあることです。おかげで私たちはいま、そのデータを使ってAI開発ができているのですから。私たちの部署は、いま、AIエンジニアが9人と布陣が揃ってきています。同業界の企業と比較すると、かなり充実している印象です。これは大きな強みです。海外と比較して日本の広告代理店は規模が大きいぶん、今後も多様な取り組みができることに期待を膨らませています。この先も知的好奇心を持ち、ビジネスと組織にインパクトを出していきたいですね。「おもしろいな」「知りたいな」という気持ちとともにAIをはじめとする新しい技術と向き合っていきたいですし、そんな仲間と一緒に仕事がしたいと思っています。

冒頭、「検索連動型広告に感動した」と話しましたが、それから20年が経ったいま、広告に再び面白いことが起ころうとしています。AIの力を借りて、より一人ひとりのユーザーにマッチしたクリエイティブを作成できるようになり、従来の広告よりもユーザーにとってストレスがない、オーガニックなコンテンツに近いものが表示される方向へと変わっていくと考えています。これは、ますますやりがいのある仕事になるでしょうから、私たちが先導して新しい価値を創りたいです。

広告を広告と思われない存在に。『三方良し』な状態を創りたい

つまるところ、私が実現したいのは、広告が(従来のイメージである)広告だと思われない状態で表れる、そんな世界です。そうなることは、広告主のみならず、ユーザーにもメリットがある。オプト社も含め、『三方良し』をつくれると思っています。ここに立ち返って考えられるようになれば、仕事のやりがいをより強く感じられるようになるだけでなく、何より広告業界を志望する人へのアピールにもつながるはず。広告は、本来うっとうしいばかりの存在じゃない。面白くて魅力あるものだと、より伝えられるようになるのです。かくいう私自身も、オプト社に戻って改めて広告の仕事に携わっていることを強く意識するようになり、そこから広告の未来について考えるようになりました。「ユーザーにとっても、広告主にとっても、良い形の広告提供をしたい」と。さまざまなソリューションを使って、この先、常にこれが実現できるようになれば幸せです。