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ビジネスプロフェッショナル。それは、専門領域の翻訳家であること。 ファイナンス領域から事業を支える、高橋の仕事観とは

2023.02.27
株式会社デジタルホールディングス
グループファイナンス領域エクゼクティブマネージャー
高橋 慎治 Takahashi Shinji
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新卒で国税専門官として国家公務員となり、その後ソニー・コンピュータエンタテインメント、ファーストリテイリング、すかいらーくなど多くの上場企業の経理部門を経験し、2018年にデジタルホールディングスに入社。2020年からエグゼクティブマネージャーとしてファイナンス領域を統括。

※本文は取材当時の情報です。

デジタルホールディングスでファイナンス領域を統括している高橋慎治。新卒から一貫して会計・税務領域で経験を積んできた高橋は、事業サイドに立ったコミュニケーションが重要だといいます。高橋のこれまでの軌跡、今後の展望とは。

魅力を感じる挑戦文化。そして、ファイナンス領域から見える景色

現在、私はファイナンスに関する3部署を統括する役割を担っています。3部署は、予算実績管理を担う「ビジネスファイナンス部」、連結決算・税務・財務会計周りを担う「ファイナンシャルコントロール部」、単体決算・債権債務管理・経費精算など、個社の決算周りを担う「アカウンティング部」であり、統括者としてのみならず、場合によっては担当者の業務レベルまで携わっています。

個人的により楽しさを感じるのは、財務会計周りの仕事です。これまでのキャリアに1番紐づいている仕事だということと、税務の複雑さが好みというのが理由です。あえて難問に挑むのが昔から好きなんです。

これまで多くの企業で経理周りの仕事を経験してきましたが、そこでわかったのは、経理の仕事には回答がすぐに出るタイプと、変化に柔軟に対応しながら答えを出していくタイプの2パターンがあるということです。これは企業によって異なり、当グループは後者に該当しています。
グループの「新しい価値創造を通じて産業変革を起こし、社会課題を解決する。」というパーパス実現に向けて、新規事業の立ち上げ時など、ファイナンス視点での柔軟なサポートが必要だからです。

過去に前者のパターンも経験してきた私にとって、魅力を感じるのは柔軟性が求められる後者です。すぐに回答が出てしまうのは個人的にあまり面白さを感じられません。変化が激しい市況の中では企業も常に変化する姿勢が必要になってくる。変化する際には、逐一新たな解を模索しなければなりません。そういった意味で、当グループは挑戦文化が根強く、どう柔軟に対応していくべきかを考える機会も多く、この環境に魅力を感じています。

デジタルホールディングスグループのもう一つの特徴は、投資事業があること。これも私の仕事の面白さにつながっています。四半期ごとに投資事業の結果を監査法人からレビューされるのですが、定量的に測れない部分があるのも、面白いところです。

 

人とは違った道で、手に職を付けたい。その想いから税務の世界へ

私は商学部の出身で、周りに公認会計士を目指す人が多い環境で学生時代を過ごしました。税理士を目指す人はあまり多くなく、私も最初は目指そうと思っていたわけではありませんでした。ただ、税務会計論の授業を受けたときに、その複雑さを知って税務に面白さを感じたんです。

本格的に税務の道に進みたいと考えた理由は、手に職を付けたかったことと、他の人とは違う道を選びたいと思ったことが挙げられます。昔から、何事も基本的に少数派が好きでした。音楽でも、ヒットチャートよりインディーズで世に出てくる前のものが好きだったりするタイプなんです。

そんな私のファーストキャリアは国税局の職員でした。このときは、いつかは税理士になろうと思っていて、国税局で10年働くと税法科目が免除になるというのも志望した動機でした。

役所なので当たり前なのですが、国税局の仕事は本当に堅くて、柔軟性を求められる環境ではありませんでした。定められたルールに従うことが求められ、創意工夫の余地がない仕事をするなかで、もっと柔軟にやりたいという想いが強くなり、真逆の世界である民間の大手ゲーム会社に転職。財務会計を基礎から学びましたが、手を挙げれば何でもやらせてくれる会社でした。今でこそ日本の収益認識もUS GAAP*1 や国際会計基準(IFRS)*2 と同様になりましたが、この会社ではUS GAAPを適用していて、オンラインゲームの収益認識ポイントをどうするかを検討したり、グループの会計ガイダンスをまとめたり、さらには香港や台湾など長期で海外に行くこともあり、海外とのやり取りも含め、さまざまな経験ができました。

*1 US GAAP(Generally Accepted Accounting Principles):アメリカ合衆国の財務会計に使用される規則・米国会計基準のこと。
*2 IFRS(International Financial Reporting Standards):国際財務報告基準のこと。現在、EUの上場企業では、IFRSの適用が義務となっている。会計基準を世界で1つにすることで、国が違っても取引相手の経営実態を正確に把握することができる。

 

フランスと日本を行き来しながら働いたアパレル企業時代

大手ゲーム会社に7年間勤めましたが、子会社で裁量が限られていたこともあり再び転職を決意しました。グローバル企業であり当時勢いがあって将来性も感じられた大手アパレル企業に移りました。
アパレル企業に属したのは3年ほどでしたが、私のキャリアにとっては非常に濃い期間でした。買収後、会計システムの統合が上手くいっていないということで、グローバルでの会計システムの統合を担当。アメリカ、フランス、イギリス、中国、香港、韓国とさまざまな国があるなか、私はフランスの業務を担当し、1年半ほど毎月2週間はフランスに行き、現地の人たちとひざ詰めで議論しながら会計システムを作り上げていきました。フランスは仕事に対する姿勢も大きく異なり、なかなかに苦労しました。会計締めの日にもかかわらず、金曜日なので働かないという人も多く、面食らったことも。英語が話せない人もいたので、フランス語の辞書を片手に奮闘しました。助けてくれる人たちと協力しながら、なんとか気合いで乗り切ったこともありました。

業務をするなかで、私の価値観を変えた印象的なエピソードがあります。
当時、社長から「経理の仕事は、店舗にいらっしゃるお客様の役にどれだけ立っているのか?」というお題を出されたことがありました。「会計システムや会計基準が統一されることで、グループの会計業務が効率的になり、それが店舗運営にも反映されるため、間接的にお客様の役に立っているはずです。」と回答したところ、「あなたはビジネスというものを全然分かっていない、我々の商売は店舗に来店されるお客様にいかに役に立つかです。それを常日頃考えていますか?」と逆に問われて回答に窮したことを覚えています。
未だに何が正解なのかは分かりません。もしかしたら正解がないのかもしれないのですが、自分のようなコーポレート部門でもあっても現場目線で考える、経営目線で考える、そして、お客様目線で考えるという軸ができたように感じ、常に思考し続けるようになりました。

 

取材カット

専門領域の知見を翻訳するコミュニケーションを心掛ける

アパレル企業を退職後、大手電子メーカーを経て、大手外食チェーン企業にジョインしました。この当時、IFRSを導入する企業が増え始めていて、IFRS適用し再上場するタイミングにあった環境に面白さを感じたんです。初めて触れたIFRSの考え方は無骨で、これもまた難しく、また、日本語訳も分かりにくかったこともあって、基本的にはすべて英語の原文を読んで趣旨を理解するしかありませんでした。難易度は高かったのですが、ワクワクしていました。

デジタルホールディングスとの出会いは、退職された上司からの紹介でした。「IFRSの導入に力を貸してくれないか」とお声掛けをいただけたんです。たくさんお世話になり、とても尊敬していた方だったため、すぐに転職することを決めました。

転職後は、IFRSに移行する作業を進めたほか、部門長としてファイナンス基盤を作る仕事に注力しました。

当時の印象的だった業務として、ファイナンス関係のグループ統一規程の作成が挙げられます。グループアセットを強化することを目的に経営方針が変更されたタイミングで、各グループの規程を統一させる必要がありました。ファイナンス領域を担当したのですが、短い時間のなかで各グループ会社の代表に説明し納得いただくというのも、なかなかタフな経験でした。ですが、適切な情報をもとに最善の経営判断を行うためには、グループ業績を迅速に正確に把握することが必要です。なるべく各グループ会社にとってのメリットとなる点を見出して、丁寧に説明して回ることでスムーズにグループ連携を実行することができました。

その他、新規事業が立ち上げ時の事業サイドとの連携も印象的です。税金のキャッシュアウトを減らすことをファイナンス視点からサポートしました。

このような業務のなかで意識していることは、事業サイドと同じ目線で会話をすること。ただ、専門知識を並べても理解されなければ意味がない。目の前の状況に合わせて、専門領域の知見を翻訳できるようなコミュニケーションを心掛けています。

 

ファイナンス視点から経営への貢献へ

グループファイナンス領域の統括を担うようになってからは、個人だけでなく、組織としても育っていく状況を目指し、メンバーに仕事を任せていくことを意識しています。入社時と比べると、ようやくファイナンス基盤ができてきた感触があります。ファイナンスや法務の仕事はどうしても守りのイメージがあると思いますが、タックスメリットを取るなど、専門知識を駆使して貢献できる立場だと思っています。私は兼ねてそういう仕事をしたいと思っていて、ファイナンス基盤ができてきた今、ようやくそちらにも手を出せるかなと思っているところです。ルールを知っている、ルールに沿って守ることができるのは当たり前で、そこから事業サイドに合わせて「こういう方法もありますよ」と提案できる。その一歩で、経営に対しての選択肢も広がり大きな貢献につながると思っています。

メンバーには、各々の実力を高めてもらいたいと思っています。報告だけではなく、経営に対しての提案、提言できる付加価値を付けられる仕事ができるようになってほしい。広い視野で考えることができるようになると、仕事はより面白くなりますし、何より事業サイドと一体感が持てるようになり、自分自身の仕事に対する愛着もどんどん湧いてくると思うんです。

グループが掲げているパーパスにある「社会課題の解決」に対して、私たちの仕事は直接的にはつながっていないかもしれません。ですが、ファイナンスの基盤を作り業務に臨むことで、適切な情報から経営判断に繋がる。その結果、世の中への価値貢献がさらに大きくなる可能性が広がる。そのように、間接的でありながらも直接的にも繋がるものだと信じて日々働いています。

アパレル企業時代に言われた「経理の仕事は、店舗にいらっしゃるお客様にどれだけ役に立っているのか?」のお題に対する社長の言葉は、今でも仕事をする上で大事な指針になっています。事業サイド、コーポレートサイドなど分けて考えることもありますが、私はコーポレートも事業の一部だと思っており、ファイナンス基盤が盤石になることで、グループの事業成長をより強く支えることができるはず。ビジネスプロフェッショナルでありながら、現場視点を欠かさずに事業伴走し、ファイナンスの観点でしっかりと経営に還元できる仕組み作りを、今後も意識していきます。

取材カット