【イベントレポート】マーケット領域で活用できるChatGPTを使ったプロダクトアイデアを競う、『ChatGPTソン』を開催
この記事の要約
・開催背景:ChatGPTの台頭により、生成AIが普及し、マーケティング業務の手法や生産性などに大きな影響を与える可能性が高い。こうした急速な時代変化に対応し、生成AIを積極的に活用する文化醸成と業界の先駆けとなる事例を創出していくことを目的に、イベントを開催。
・イベントの概要:ChatGPTを用いた業務プロセスの簡略化、提供価値向上、新規ソリューション開発をテーマに、48のアイデアが予選で提出され、6つのチームが決勝に進出。最優秀賞、優秀賞、特別賞が用意され、利用インパクト、実現性、ソリューションの魅力を基準に審査を実施。
・結果発表:特別賞は、キャラクター×ChatGPTで新しい顧客体験と深いつながりを生み出す「Soulful Bot」、優秀賞は、ChatGPTをサイトパトロールの自動化に活用した「SitePatrol改」、最優秀賞は、サービス開発のテスターが抱える課題意識と責任感が生んだアイデア「てすと忍者~目にも止まらぬ早技でクイック且つ効率的なソフトウェアテストをサポートするニン~」が受賞。
・主催側の想いや工夫:予選前に参加者のアイデアの量と質を担保し、参加者同士のコミュニケーションも強化するため、「アイデア発散会」を開催。
イベントの開催背景と概要
私たちは生成AIをいち早く業務に取り入れるべく検証を行い、その結果をお客さまに提供することで、生成AIを活用したマーケティング活動が社会に浸透することをミッションとしています。本イベントは、その第一歩の位置づけであり、会社を挙げての積極活用と各人の業務に活かすことを目的に開催しました。
- 開催テーマ
- 社内・顧客の業務プロセスの簡略化
- 顧客、エンドユーザーへの提供価値向上
- 新規ソリューション開発
- 参加フロー
- 各社でチームを組成
- 7月中旬の「アイデア発散会」に参加し、アイデアのブラッシュアップ
- アイデアソンへの応募
- 審査フロー
- 一次審査:審査員が全48のアイデアを審査し、上位6チームを選出
- 最終審査:審査員がプレゼンテーション内容を審査
- 審査基準
- ①利用した際のインパクト
- ②実現性
- ③ソリューションとしての魅力
- 審査員
- 株式会社デジタルホールディングス グループCSO 石原 靖士
- 株式会社デジタルシフト 代表取締役社長 吉田 康祐
- 株式会社デジタルシフト 取締役 前村 真之介
- 株式会社デジタルシフト 取締役CTO 山口 友弘
- 株式会社オプト 執行役員 岩本 智裕
決勝プレゼンテーションの様子
決勝に進んだ6チームは、審査員と観客が見守るなか、それぞれ12分の発表に臨みました。オンラインからも多くの社員が参加し、プレゼンターに熱い視線を送りました。
1番手で登場したのは、SitePatrol改造企画推進連盟チームです。アフィリエイトサイトを自動監視するアイデア「SitePatrol改」について、メルヴィン・チャールス・ディーがプレゼンしました。
「当社が扱う広告を掲出されているアフィリエイトサイトの数は多く、記載されている金利や限度額などに間違いがないか、好ましくない表現がないか内容を細かくチェックする必要があるため、チェック作業は複雑で時間がかかります。そこで、私たちはChatGPTで監視の自動化を行うアイデアを提案します。」
続いて登場したのは、データテクノロジー開発部ToDoリストチームです。菱田悠士郎がアイデアを説明します。
「Slackやミーティングの議事録など、会社のあらゆる情報をデータベースに集約し、各チームの情報とあわせてChatGPTにインプットすると、“神視点”で重要と判断された目標、タスクが出力されます。このような未来は、近いうちに必ずやってくると私たちは考えています。As Isではなく、To Beだと。新しい価値を創造するのだと。そのような価値観のもと行動している私たちだからこそ取り組むべき内容だと考えています」
三番目のプレゼンチーム、CXクリエーションチーム2は、「てすと忍者~目にも止まらぬ早技でクイック且つ効率的なソフトウェアテストをサポートするニン~」というユニークな名称のアイデアを披露しました。
「『てすと忍者』は、開発中のソフトウェアのソースコードを読み込ませることで仕様書やテスト項目書などを出力することができます。また、テストで注意すべき点を教えてくれたり、進捗を自動計算してくれたりもする想定です。これらにより、約30%の工数削減が期待できます」
四番目に登場したCXクリエーションチーム5は、「Generative Pre-trained Engineers」というアイデアを発表しました。
「開発に携わっていない人がセールスでプロダクトを売ることは難易度が高く、お客さまの質問にその場で答えられないことがあれば、開発者に何を聞けばよいのか分からないこともあります。『Generative Pre-trained Engineers』は、これらの課題を解決できるアイデアです。エンジニアに代わっていろいろな質問に答えてくれます」
五番目にプレゼンに臨んだCXクリエーションチーム1のアイデアは、『Soulful Bot』というアプリ内のキャラクターボット。杉山誇京がそのあらましを説明します。
「2020年、コロナの流行により、時間と空間に制約を持たないデジタル領域の顧客接点、“テックタッチ“の活用が喫緊の課題となりました。そして、アフターコロナのいま、テックタッチの重要性は高まっています。その一方、クーポンの配布、ポイントスタンプといったデジタル上の施策は目新しさを失い、企業もユーザーも新たなデジタル接点を望んでいます。そこで私たちはキャラクターを有効的に活用すべくchatGPTと掛け合わせ、新しい顧客体験を提案します」
最後の発表者は、チームミーティングをslackでチームです。乾竜也がプレゼンに臨みました。
「Slackで動くChatGPTのプラグインのようなものを開発してみませんか? ChatGPTがSlackで動いたら嬉しくないですか? 私たちが目指しているのは、Slack Botをもっと簡単に使えるようにすることです。ChatGPTを活用すれば、利用者は操作方法を覚えなくてもSlack Botが使えるようになります。UIを設計する必要もなくなるため、開発のハードルも下がります。
便利な機能があっても実際に使いこなすのはなかなか難しいものです。けれども、使えば工数削減につながる機能があることも事実です。それならば、一定の機能がまとまったSlack Botを使える状態で提供できないか、と私たちは考えました」
審査結果
特別賞:CXCRチーム1「Soulful Bot」
審査員からは、他サービスとの連携の可能性やChatGPTを利用したキャラクターの多様性、アプリのスプラッシュ画面やローディング画面での利用という具体的なフィードバックが寄せられ、アイデアの持つポテンシャルの高さがうかがえました。
受賞コメント
「短い期間でしたが、このアイデアとしっかり向き合ってきました。その時間はとても楽しかったですし、良い結果が現れたと思います。どのチームからも『一人一人が社長』というデジタルホールディングスグループのバリューのもと、アイデアを考えられていることが伝わってきました」
優秀賞:SitePatrol改造企画推進連盟チーム「SitePatrol改」
「ChatGPTの利用方法として最適であり、工数削減という観点から非常に魅力的」との声が審査員から上がり、その実現性とインパクトが高く評価されました。
受賞コメント
「開発がとん挫した過去があったため、この形で再挑戦できたことが、とても嬉しいです。当時よりもAIに詳しくなっていたため、改善を図りながら形にしていきました。開発に進むのなら心を込めてやりたいです。皆さん、サポートありがとうございました」
最優秀賞:CXクリエーションチーム2「てすと忍者~目にも止まらぬ早技でクイック且つ効率的なソフトウェアテストをサポートするニン~」
最優秀賞は、「すぐに実現してほしい」「市場の大きさと熱意が感じられる」という審査員の言葉のとおり、ChatGPTを活用することの新規性や独自性、そして実現に向けての企画力で高い評価を集めた、CXクリエーションチーム2「てすと忍者~目にも止まらぬ早技でクイック且つ効率的なソフトウェアテストをサポートするニン~」に贈られました。
受賞コメント
「ユーモアを取り入れつつ、伝えたいことを伝えられるものをつくって楽しんで発表しました。その思いを熱意と一緒に届けられたことが受賞につながったと思っています。『てすと忍者』を実現できたら、と心の底から思っています。とても勉強になりましたし、良い経験を積ませてもらいました」
■決勝戦出場チーム、イベント参加者の感想
- 「これからChatGPTを使ったサービスがどんどん出てくるのだろうというイメージが大いに湧きました。いろいろな業務でChatGPTをもっと活用したいと思います」
- 「普段の業務で関わりの薄い人とチームを組んで活動することがとてもおもしろかったですし、新たな気づきも得られました。GPT-4を通してできることが多く見える、とても有意義な機会になりました」
- 「すぐに使いたいと思わせるアイデアばかりで、聞いていてとても楽しかったです」
- 「テキストの生成しか使いこなせていなかったため、プラグイン機能などを使いながら、仕事にどんどん活かしたいと思います」
主催者の想い
本イベントを主催した、デジタルシフト社 AIイノベーション推進室 室長 内田隼人、同 松澤文子に、「ChatGPTソン」開催までの動きと手応え、今後の展望について聞きました。
■アイデア発散会を行った意図
松澤 企画の前段階で、自部門でChatGPTを活用したハッカソンを試みたのですが、その際に「ビジネスアイデアは都合良く閃くものではない」と痛感しました。社内でChatGPTを頻度高く使う私たちでさえその状態だったため、まずはChatGPTを活用~理解してもらう必要性を感じました。また、ビジネス開発経験のないメンバーが大多数の中、アイデア創出を実現するために「アイデア発散会」というワークショップを実施し、個々人でアイデアを創出~チーム内で共有・アイデアを昇華していくプロセスを経ることにしました。
■盛り上がりを作るうえでの工夫
松澤 弊社でもまだChatGPTが浸透しきっているとは言えない状況なので、まずは主催側が「ChatGPTをフル活用する」「アイデア創出する過程やイベントを楽しむ」ように心がけました。そのために、本イベント専用のSlackチャンネルを作成し、ChatGPT自体に関する情報や定期的なイベントの状況発信に努めました。
■今後のデジタルシフト社のAI活用における展望
内田 現代のマーケティングは複雑化し、デジタル化が進むなかで、戦略的な取り組みや新しいイノベーションが難しくなっています。生成AI(例: ChatGPT)はマーケティング業務の生産性向上の鍵であり、企業の変革を促進できると考えられます。
このため、生成AIを活用したマーケティングの普及をミッションとし、以下の展望を持っています。
- ノウハウ共有: ChatGPTや生成AIのノウハウ共有と研修プログラムを提供。
- AIコンサルティング: お客様に合わせた生成AIのコンサルティングと伴走支援を実施。
- AIマーケティングツール開発: AIベースのマーケティングツールの開発と連携を深め、効率的な業務をサポート。
- 業界別カスタマイズ: さまざまな産業向けに生成AIソリューションを開発し、業界固有の課題を解決。
- AIイノベーション推進室: AIイノベーション推進室を設立し、外部パートナーシップを強化してマーケティングエコシステムを構築。
ChatGPTソンの開催によって、生成AIの活用に対する解像度が高まったと感じます。
今回、出てきたアイデアをサービスへと昇華させながら、ソリューションの開発を進めていきます。