自分のキャリアについて考える。キャリアを一歩前に進めるヒント~自分を知り、自信を高める「デジタルキャリアカフェ」開催レポート~
2009年オプト新卒入社。運用型広告のコンサル、マーケティング担当を経て、CRMコンサル・データ分析・ブランド調査等に従事した後、2021年2月CXデザイン部部長に就任。同年4月より部署ごと株式会社デジタルシフト社に異動し現職。2021年8月より企業派遣として大学院大学至善館へ入学し経営について学んでいる。
2023年よりCX共創本部付・経営企画部兼務。
※所属会社・部署名は開催時2022年12月時点のものです。
2008年オプト新卒入社。メディアプランニングや運用型広告コンサルをはじめ広告効果計測ツールの戦略立案・導入推進・設計・データ分析等様々な業務を経験した後、現部署に異動しデータコンサルタント業務に従事。初めての顧客フロント業務へキャリアチェンジを果たす。プライベートでは3児の母で2023年より産育休取得予定。
※所属会社・部署名は開催時2022年12月時点のものです。
2005年オプト新卒入社。クリエイティブ部門で約17年経験を積み、デザイナー部門の設立やディレクター組織の室長など部門長を長きにわたり務め約40名の部下のマネジメントを経験。2022年9月にグループ会社の株式会社バンカブルに異動し現職。未経験のカスタマーサポート構築にチャレンジ中。プライベートでは1児の母。
※所属会社・部署名は開催時2022年12月時点のものです。
2008年オプト新卒入社。自ら志願しコスメ営業部に異動してからは同部署で経験を積み、部長を4年間務める。その後営業統括、経営企画を経て、2021年3月DE&I推進室を役員提案によって設立し初代室長に就任。設立と同時期に産育休を取得し、2022年復職時より現職で企業様の新規事業立ち上げ支援を行っている。プライベートでは1児の母。
※所属会社・部署名は開催時2022年12月時点のものです。
今回、デジタルホールディングスでは女性社員向けの社内向けキャリアワークショップ「デジタルキャリアカフェ」を、2022年11月29日(火)、12月6日(火)にオンラインにて実施しました。
女性社員より「ライフステージが変化した時に、これまでのように仕事を続けられるかどうかが不安」、「周囲に相談できる先輩がいない」、「ロールモデルがおらず、自分の未来を上手く思い描けない」との声を受けて、任意参加での開催となりました。
デジタルキャリアカフェの講師は、Mentor For社 代表取締役の池原真佐子さんが、進行を同社取締役の宮本桃子さんがそれぞれ務めました。各回パーツモデル※には、デジタルホールディングスから横山かよ子さん、田渕温子さん、松澤文子さん、鎌田友佳さんの4名が登壇しました。彼女たちは、管理職として大勢のマネジメント、仕事と育児の両立、大学院入学やキャリアチェンジへの挑戦など、様々な経験をしてきた方々です。本記事では、このワークショップの様子をレポートします。
※パーツモデル:特定の人物をキャリアの参考にする「ロールモデル」とは異なり、様々な人の考え方や行動の規範を一つの「パーツ」として捉え、自身のキャリアの参考にしていくモデル
株式会社Mentor For代表/ 一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会 代表理事
池原真佐子
早稲田大学・大学院卒業後、PR会社、教育関連のNPO、コンサルティング会社と経験。コンサル会社在職中、INSEADでExecutive Master in Change (コーチング・組織開発)修了。2014年に起業。その後妊娠するも、臨月でパートナーの海外単身赴任が決定。日本に残りワンオペ育児になったことを契機に、社外メンターを育成・企業の女性リーダーにマッチングする新規事業を2018年に立ち上げる。2年半のワンオペ育児を経てドイツ移住。2年間ドイツと日本で2拠点生活を経験。
株式会社Mentor For 取締役 / 一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会 ダイレクター
宮本 桃子
株式会社東北新社の後、ヤフー株式会社に15年在籍。セールス、業務推進を経験後、営業企画部門の部長としてマネジメントを行う。 ベンチャー企業での執行役員を経て、株式会社カオナビで執行役員カスタマーエンゲージメント本部長に就任。マザーズ上場を経験。2021年、株式会社Mentor Forの取締役に就任。複数スタートアップの支援、メンター活動も行う。女性リーダーのエンパワーメント、ビジネス支援を得意とする。
「キャリア」とはそもそも何なのか。
デジタルキャリアカフェの目的は、「キャリアの現在地を知り、目指したい未来を描く」こと、「ありたいキャリアを叶えるための、マインドセット・スキルを理解する」ことの2点です。
また、キャリアとは働くことに関わる「継続的なプロセス(過程)」と働くことにまつわる「生き方」そのものを指していて、キャリアを積むということはその仕事に取り組むプロセスの中で身につけていく技術・知識・経験に加えて、人間性を磨いていくこと、そしてプライベートも含めた自分自身の生き方を磨いていくことと言われています。
そのため、講座やパネルディスカッションをただ聞くだけではなく、自分自身のキャリアを考えるワークの時間や、それらをグループで対話するなど、参加者が能動的に参加する時間も多く設けられました。
まずは1分間で名前・部署、本ワークショップへの期待や学びたいこと、自分にとっての「キャリア」について自己紹介を兼ねてチャットに入力。入力が終わったところで、まず「キャリア」とはそもそも何なのか、池原さんによる講座を通して考えました。
「キャリアの途中には必ずアイデンティティに『ゆらぎ』が起こる」と池原さん。「〇〇のプロ」、「〇〇会社の人」など、自分自身を形作るアイデンティティは、一生固定のものではなく、3~5年周期で波があり、時にはどん底になる経験をする人もいると説明します。では、充実したキャリアには何が必要なのでしょうか。
「充実したキャリアには、外的要因と内的要因のバランスが取れている必要があります。外的要因は仕事内容、地位、実績、給料など。内的要因には価値観に基づいた意味づけが該当します」(池原さん)
では、そのバランスを保ってキャリアを形成していくためにはどうすればよいのでしょうか。キャリアを形成していくプロセスには、将来の明確な目標に向かって山を登るようにしてキャリアを積む「目的逆算型(山登り型)」と、目的が明確ではないが、会社からのミッションに向き合うなかで経験が蓄積されていく「目の前コツコツ型(川流れ型)」の2タイプに分けられます。「キャリア形成というと山登り方をイメージされる方が多いかもしれませんが、人によりキャリア形成のタイプは異なり、どちらでなければならないという事はないのです。」と池原さん。自分がどちらのタイプだと思うかを参加者に尋ねたところ、多数を占めたのはコツコツ型。「コツコツ型の特徴は一生懸命頑張れるところ。迷いながらでも真摯に向き合っていくと、1+1が3にも4にも5にも飛躍するというメリットがあります」と加えました。
女性のキャリア形成の特徴
続いてのテーマは女性のキャリア形成の特徴でした。現在、日本の就業者の半数近くを占めるようになった女性。この就業者はすべてが正規雇用ではなく、非正規雇用も含んでおり、まだまだ非正規雇用で働く女性が多い状況です。一方で、就業者の半数を女性が占めるようになった現在、管理職の一つである部長職も男女同じくらいの割合でありたいですが、現実には女性部長の割合は7.7%と圧倒的に男性が多い状態が続いています。なぜ、ここまで差が開くのか。池原さんは次のように説明します。
「諸手を挙げて管理職になりたいという女性は実は少数派だと言われています。要因の1つとして、男性と比較しても社内の管理職に同性のロールモデルが少ないこと。次にメンターがいないこと。男の先輩には女性特有の話を相談しにくいという課題ですね。世界的に見ても、女性のほうが男性よりフィードバックを受けにくい傾向があるとも言われており、こうした点で成長に無意識に差がついてきているとも言われています」
次に取り上げられたのは、女性×組織を取り巻くキーワード。挙げられたのは「オールドボーイズネットワーク」「リーダーシップのジレンマ」「無意識バイアス」の3つでした。
オールドボーイズネットワークとは、男性だけの非公式な集まり、コミュニティのこと。ゴルフや女性がいる夜の店を使っての接待や飲み会などは、女性や、育児や介護などで時間的制約がある男性も参加しづらく、情報共有に差が生じてしまうことが問題視されています。
リーダーシップのジレンマとは、女性がリーダーになった際、女性という性に期待されてきたイメージとリーダーに期待されるイメージとの差で起こす葛藤、ジレンマを指します。社会が女性に期待するものは「母性的」「やさしさ」「控えめ」とフェミニンなものが多いことに対し、リーダーに期待するワードの約85%がいわゆるマッチョなイメージだとされている、この違いによる葛藤です。
「将来リーダーシップを発揮するときには、従来のイメージにとらわれず、自分の強みや得意なことで目的達成をしていくとジレンマが解消されやすいです」と池原さん。
最後の無意識バイアスは職業、性別、血液型などで無意識に描かれるイメージです。日本は特にジェンダーバイアスが他国と比べて強いと言われており、自分自身や他人を「女だから」「男だから」と縛ってしまうことがあると認識しておくことが大切です。
また、ライフイベントがキャリア選択に影響を及ぼしがちな点も、女性のキャリア形成における特徴です。就職・結婚・出産や育児・介護など、ライフイベントによって見える景色や課題は大きく異なります。さらに、「子どもが2人ほしければいつ頃には1人目を産みたい」など、まだ起きていない未来のことでもモヤモヤを感じ、キャリアにブレーキを踏んでしまいがちだという傾向もあるといわれています。
なぜ、女性だけがキャリアにライフイベントの影響を受けやすいのか。その理由について、池原さんは「男性側に曲がったリンゴの木」のイラストを例に挙げて説明します。
「今まではリンゴは男性側に多く実り、木自体も男性側に曲がっていることから男性がリンゴを取りやすい状況でした。そのため、最近では女性側により高い踏み台を置き、女性もリンゴを取りやすくしようという考えがありこれがDiversity,Equity&Inclusionと言われるうちの真ん中、Equity(公平性)です。女性に下駄を履かせているという人もいますが、そうではなくこれは手が届く位置を揃えているだけの話なのです」
さらに、ここから目指したい状態について、池原さんは「木をまっすぐにしていくこと」だと述べます。
「手を伸ばしたい人が伸ばせば届くことが大切です。また、木がまっすぐになれば実りももっと豊かになる。男性であれ女性であれ、さまざまな事情がある人が自分の能力を自分らしく発揮していける組織づくりが求められています」
各回3名のパーツモデルの経験を聞くパネルディスカッション
本ワークショップでは、各回に3名のパーツモデルを招いてのパネルディスカッションも行われました。第1回に登壇したのは横山かよ子さん、田渕温子さん、松澤文子さん。第2回に登壇したのは横山かよ子さん、松澤文子さん、鎌田友佳さんです。
最初のテーマはこれまでのキャリアでの葛藤・失敗・モヤモヤについて。
鎌田
「役職や年齢によって内容は異なりますが、ずっとモヤモヤしています。周りの目を敏感に感じてしまうので、あとから思い出してモヤモヤすることも多いです。今悩んでいるのは育休から復帰して1年経っていない現在、今までのように仕事に100%割けないこと。将来の2人目のことを考えてもモヤモヤがあります」
松澤
「育児による仕事時間の制限は私も1番感じたところです。特に1度目の復職のときには、無理がたたって何度も盲腸で入院してしまったこともありました。このときに、飾った自分を出していたらガタがくると学び、ダメな自分もそのままさらけ出すようになりました」
横山
「基本的にずっとモヤモヤしています。自分は何になりたいのかが分からなかったり、異動後に周りと比べて自分のスキルが全然足りないと悩んだり、明るく物事を捉えられない性格なので、基本的にずっと鬱々している感じです。そこから変わってきたのは、マネジメント職に就くようになってから。直近では部長になったタイミングで、自分を起点にした考え方や視点ではなく、組織に対して目を向けられるようになったことが私にとっては良かったと思っています」
田渕
「私がモヤモヤし始めたのは部長になってからです。理由は、それまで指示やキャリアアップのチャンスくれていた上司がいなくなり、自分で考えなければならなくなったから。長年同じ仕事をしてきたこともあり、新しくスキルアップしている実感も持てなかったです。さらに、子どもを産んだことも重なり、35歳くらいからチャンスが減っている感覚がありました。直近5年ぐらいは“誰かが導いてくれたらいいのに”と感じモヤモヤしていました」
続いての議題は、そうした失敗や葛藤を乗り越えるためのマインドセットです。
鎌田
「乗り越えられていないです(笑)。ただ、誰かに相談することが解消法にはなっています。先輩だけではなく、部の後輩にもいろいろ話していますね。自分と同じ価値観の人は共感してもらいたいときの話し相手、意見がほしいときにはあえて異なる価値観の人を選べばいいのではないかと思っています」
松澤
「プライベートで環境変化により苦労している話を身近で聞くことが度々あり、これからの時代保障なんて何もないのだと実感しました。挑戦し進化し続けることこそが保険なのだなと。そのため、ダメなところをさらけ出して挑戦するようになりましたね。チャレンジしないほうがむしろ危険だと思うようになってから、挑戦のハードルが下がりました」
横山
「人に相談することですね。幸い、私は周りの人に恵まれているということもあるのですが、強いて意識していることを挙げるのであれば、人から頼られたときに全力で返すこと、こちらが相談するときは話を聞いてほしいという姿勢で素直に話すことだと思います」
田渕
「とりあえず3ヵ月やってみたら何とかなるという実体験があります。最初はかなり苦しいのですが、今も何か新しいことがあったら3ヵ月は頑張ろうという気持ちで乗り越えるようにしています」
最後のテーマは、参加者に向けてのTipsやアドバイスです。
鎌田
「まあいっか、という気持ちを持つように心掛けています。無責任に聞こえるかもしれませんが、完璧主義を目指すあまりに苦しい日々を過ごすのは結構しんどいなと。死なないから大丈夫でしょうという気持ちで生きると、いろいろなものから解放されると思っています」
松澤
「育休中に、他人は大して自分のことを見ていないのだなと気づきました。例えばスッピンで外出しても指摘されませんし。ですから、皆さん周りを気にしすぎず、自分の好きなように生きていっていいと思っています。もし、それで失敗したとしても、その失敗談はあとからネタにできることもあります。失敗することを恐れずに、面白がって生きると楽しくなるのかなと思いました」
横山
「『コト』に集中したほうがいいという話を聞いたことがあり、その言葉にすごく惹かれています。周りの目や場の雰囲気を壊すことを意識しすぎず、自分は一旦置いておいて、本当に今言うべきことは何だろうなと考えることが個人的にはとても良いことだと思っています」
田渕
「参加されているのは20代30代の人が多いと思います。40歳になって分かったのは、今の環境の働きやすさ。私は遅めの36歳で出産しましたが、20代から30代前半までの経験とキャリア貯金が今の私を助けてくれています。27歳から30代前半が自分の時間も取れて仕事人としても成長できる期間だと思うので、ぜひ自分のキャリア形成に目を向けてもらえたらと思います」
一歩踏み出すために必要なこと
最後は再び池原さんによる講座が行われました。テーマは「一歩踏み出すための自信と知識」。大切なのは、コンフォートゾーンから飛び出すという考え方です。「ちょっと頑張ればいける」というストレッチゾーンに踏み出すために必要な勇気を得るためには、2つのポイントがあります。
1つは自己認識。この自己認識には内的なものと外的なものとがあります。好きなことや価値観、使命など内的なものだけではなく、外からみた自分についても自分で理解できていることが大切です。
もう1つは自信。自信には自尊心と自己受容とが含まれますが、まず大切なものはダメな自分も含めて自分で受け止められる自己受容です。
「まずは自分に他愛する確信を持つこと。その上で大切なのは、自分のやり方に対しては確信を持たず謙虚でいることです。自分のキャリア、他人への接し方については確信を持たずにいることで、自信に満ちた謙虚さを身に付けられます」(池原さん)
3時間という長時間にわたって開催された本ワークショップ。参加者からは、「まあいっか、という気持ちも大切にしようと思った」「周りを気にしすぎず行動しようと思った」「グループワークで対話した他の社員の方も登壇いただいた先輩方も同じような悩みを抱えていて共感できたのが嬉しかった」「自身のキャリアに関して、考えてもモヤモヤしたまま終わることが多かったので、改めてインプットしつつ、グループで対話をしたりアウトプットする時間が出来て有意義な時間にできた」など、さまざまなコメントが寄せられました。
このワークショップは今後も年に1回程度実施をしていく予定です。