男性育休・休暇取得経験者に訊く。10日間の休暇取得で、何がどう変わる? ~デジタルホールディングス、最短10日の育児休暇取得が必須に~

2022.03.30
株式会社オプト
ブランドクリエイティブ部
萩原 一生 Hagiwara Kazuki
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職種:コピーライター兼プランナー
年代:30代前半
家族構成:妻、子ども(10カ月)


育児休業は子どもが2カ月から8カ月になるまでの半年間取得。

株式会社オプト
第一営業本部 営業一部 部長
山本 孝太郎 Yamamoto Kotaro
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年代:30代前半
家族構成:妻、子ども(4カ月)


リフレッシュ休暇を活用し、妻の産後から2週間の休みを取得。

株式会社デジタルシフト
LINE戦略部 部長
早田 翼 Hayata Tsubasa
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年代:30代前半
家族構成:妻、子ども(9カ月)


出産に合わせて、出身地である札幌に転居。出産後に子供の定期健診や予防接種、役所手続きに付き添うため、時間単位で有給休暇を取得。フルリモートワークの合間に育児に積極参加中。

株式会社デジタルホールディングス
DE&I推進室 室長
菅原 智華 Sugawara Chika
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年代:30代後半

グループCOO直下のDE&I推進室にて、ダイバーシティ経営を推進。

※DE&I推進室:ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン推進室

2022年4月1日より、デジタルホールディングスは、『チャイルドケア休暇』制度を新設。
男性の育児休業取得促進を目的に、改正「育児・介護休業法」が施行されることに賛同し、社員に出産・育児をきっかけに、今後の働き方や生き方を、家族と共に改めて考えてみてもらいたいとの想いから制定に至りました。この制度は、配偶者の出産予定の6週間前から産後8週間を始期とする時期に最大で連続で20営業日の取得が可能な休暇で、10日間の休暇取得を必須とするものです。これまで男性育休取得の壁の一つであった経済的不安を解消するため、給与が全額支給される特別休暇となっています。

今回は、制度制定よりも前にそれぞれのスタイルで育児休業・休暇取得で育児に向き合った3名の社員に集まってもらい、育児休業・休暇を利用した理由、実際の体験談、そこから見えてきた家庭への想い、仕事の考え方、さらには本制度に対する期待を聞きました。育児にかかわることで見えてきた自分の望む働き方、生き方とは。それぞれに起きた価値観の変容にもご注目ください。
 

子どもと1日中過ごせるのは、赤ちゃんの「いま」だけ。妻と成長を見守りたいと思った

菅原:まず萩原さん、6カ月の育児休業取得は、まさに先駆者です。取得のきっかけって何だったんですか。

 

もともと子どもが生まれたら育児休業を取ろうと決めていました。子どものお世話に慣れ、家のことも妻と同等にできるようになるには、半年くらい必要と思ったことから長期の取得に至りました。
 

 

 

 

 

 

菅原:半年間の育休取得をしようとの判断に影響を与えたものや出来事などはありましたか。

 

特にはなく、ただ自分の思いが強かったですね。子どもと1日ずっと一緒にいられるのって本当に赤ちゃんのうちだけ。保育園や小学校に通うようになるにつれ、朝と夜しか顔を合わせなくなるので、まさに「いま」を妻と一緒に見届けたいと思いました。
 

 

 

 

 

 

菅原:山本さんはリフレッシュ休暇(※)を育児に充てたとお聞きしました。

(※)リフレッシュ休暇は、3年に1度付与される連続10営業日取得可能な特別休暇

 

僕は当初、「里帰り出産のほうが妻は楽だろう」と思っていたのですが、夫婦で話し合った結果、「自分たち2人で育てるべきだよね」という結論に至りました。男性は子どもを産めないので、最初から子どもとしっかりかかわらなければ育児が他人ごとになる、と感じていて、妻とは「子どもと向き合うことで自分の気持ちに変化を起こしたいよね」みたいな話もしていました。
 

 

 

 

 

 

菅原:夫婦で話し合って決めていったところが、素晴らしいですよね。
早田さんは、お子さんのこと、仕事のこと、決めなければいけないことが多かったのではないですか。

 

僕は入社当時から『齢30、妻子あり、北海道凱旋』っていう青写真を描いていました。コロナ禍になって、リモートワークになって、もう北海道に戻ってもいいんじゃないかって思ったときに、息子ができて。そこで会社に相談したら、全員が背中を押してくれたのが大きかったですね。
 

 

 

 

 

 

菅原:お子さんの誕生がご夫婦のライフプランを実行する決め手になったんですね。

 

とはいえ、仕事はハードな部分も多いので、萩原さんの話のとおり、東京でオフィス勤めを続けていたら、子どもに朝と夜しか会えない生活になると思いました。なので、ニューノーマルが浸透してきて時間や場所の考え方が自由になったのを機に、全部を変えてみようと実行しました。
 

 

 

 

 

“時間の自由さ”を利用して、育児に主体的にかかわることが重要と気づいた

菅原:お休みを取得したことに対するご家族の反応はいかがでしたか。

 

「取得して良かったね」っていうのは、いまも家の中でよく話しています。これは子どもの一瞬一瞬の成長を一緒に見ていられるからですが、もう一つ大きかったのは、うちは共働きなので妻が「ワンオペは絶対に無理」とずっと言っていたこと。そうならないよう最初から僕もかかわることで職場復帰後もお互いドギマギすることのなかった点は良かったです。
 

 

 

 

 

 

菅原:職場の皆さんはどんな反応でしたか。

 

みんな、すぐに受け入れてくれました。「サポートするよ」「子どもとの時間を大切にしてね」と声をたくさんかけてくれて。とても感謝しています。
 

 

 

 

 

 

菅原:萩原さんは半年ものあいだ、会社の情報には一切触れない生活をされていたと思うのですが、「そういうもんだ」とすんなり切り替えられるものでしたか。

 

そうですね。慣れたというか、情報が入ってこないことへの抵抗はなかったですね。会社との接点は、たまに開かれる育休産休取得者が集まるランチ会と、同僚から「引き継いだ案件がローンチしたよ」みたいな連絡がメッセンジャーで届くくらい。僕は半年間いないもの、とされていたことが、むしろありがたかったです。
 

 

 

 

 

 

菅原:復帰の時に大変だったことはありますか。

 

会社のシステムがいろいろ変わっていたので、それらを理解するのが大変でした。1カ月くらいの時間をかけて勘所を取り戻していく感じはありました。
 

 

 

 

 

 

菅原:続いて山本さん、社内の反応はいかがでしたか。

 

約2週間の休みだったので、育休を取得している感じがあまりなかったようです。ただ、休暇が明けたあと、「18~20時で抜けて家のことをしたり、妻が休めるよう子どものお世話をしたりしている」と話したときには、「ぜひそうしてください」という反応が返ってきたので、家族と向き合うことへの理解と前向きさが社内にも広がっていると感じました。
 

 

 

 

 

 

菅原:これからメンバーが育児休暇を取得するときには、どういうアドバイスをしたいと思いますか。

 

『チャイルドケア休暇』や、フルリモートの環境をうまく使えば、男性が育児に参加する時間は結構あると思っています。たとえば、お昼は半分の時間で済ませて残りの時間で子どもの世話をしたり、ときに早めに仕事を切り上げたり、休憩中に家事をしたり、フルフレックスを活用したり。当社グループならではの“時間の自由さ”を利用して、主体的にかかわることが重要だと思います。
 

 

 

 

 

 

菅原:早田さんはいかがでしょうか。まずはご家族の反応を聞かせてください。

 

「何かあったらすぐに動けるところは、一般的な共働き家庭と比べたら救われている」と、妻に言われたことはありましたね。おむつ替えを手伝うにしても3歩歩けば済むような距離にいますから。とはいえ、日中は普通に仕事をしています。この前、ミーティング中にドッと笑いが起きたのですが、隣の部屋ではちょうど息子が泣きじゃくっていて。妻からは、「こっちは泣いているのに、そっちは笑っているのがわかるから、仕方ないこととわかっていながら腹が立つ」と言われましたね(笑)。いろいろありますが、近くにいる、時間を細切れでも使える、というのは良いことだと思っています。
 

 

 

 

 

 

菅原:非常にリアルなエピソードですね。私も同じ場面ならば、そう思ってしまうかもしれません…(笑)職場の反応はいかがですか。

 

僕が「札幌に帰りたい」「働く場所を変えたい」と思っていることをわかっているメンバーだったので、息子ができていよいよそのタイミングだと話したときはみんな応援してくれたし、「新しい考え方のもと働き方を決めていくべきなんだよね」みたいな空気も生まれました。実際、ウインタースポーツ好きのメンバーが、長野からリモートワークしていますし、地方移住を探るメンバーも出てきています。こうした選択肢が広がったことはよかったと思っています。
 

 

 

 

 

 

 

 

「仕事と家庭の両立」とは、自分の働き方の問題でもある

菅原:パートナーの自己実現について、考えたり話し合ったりしたことはありましたか。

 

妻は現在も育休中なので「復帰するとき、どうしようか?」という話は当然しています。彼女自身が今後どうしていきたいのかは、継続して話し合いたいです。
 

 

 

 

 

 

我が家は、お互いに仕事50:家庭50で考えています。こっちがこうだから、そっちがこうしなきゃいけないっていうのは深く考えず、「フラットな関係のまま、やりたいことをやったり、就きたい職に就いたりしたいね」という話はしています。
 

 

 

 

 

 

僕も話はしているものの時間軸がまだ先なので、抽象的な感じはあります。その一方、部門でも育休から復帰する女性が出てきているので、女性の働き方については、いろいろ考えさせられています。つまるところ、仕事と家庭の両立って会社の問題であり、自分自身の働き方の問題であり、妻の自己実現をサポートするものであり、家族計画にも密接にかかわっているものだと実感しています。
 

 

 

 

 

10日は十分とは言えないかもしれない。 だけど、自分の価値観に変化を起こす有意義な期間になる

菅原:デジタルホールディングスでは、必須で10日間(最大で20日間)の男性育児休暇の付与を行うことになりました。実際の経験者である山本さんたちから「5日間では意味がない。」という意見が出たことが、最短必須取得の日数を10日に延長したことに反映されています。 10日間の必須化に対する感想と、会社に提言したいことを聞かせてください。

 

とても良い取り組みだと思います。ただ、半年間取得した立場からすると、最低でも3カ月ぐらいは必要かと。僕は妻にこの制度の話をした時に「お世話が必要な人がもう一人増えるだけ」って結構辛辣なことを言われたんです(笑)。そうならないよう、まずは育休を取って、「もっと家族と一緒にいたいな、いたほうがいいな」と実感したうえで、さらに取得できるようになるとよいですよね。
 

 

 

 

 

 

菅原:なるほど。育休の二段階取得ですね。

 

もう一つ思うのは、そもそも女性はこれが当たり前なのに、「あえて男性を対象にした制度をなぜつくらなければならないのか」と疑問を持つきっかけにしなければいけないということです。これを機会に、男性の育休が当然という空気が生まれるといいですよね。優秀な人に当社グループを選んでもらうためにも、育休が取りやすく、制度が充実していることは、歓迎したいです。
 

 

 

 

 

 

菅原:山本さんはいかがでしょうか。

 

5日間では意味がないといったのは、休みは長ければ長いほうが引き継ぎもしっかりでき、そのぶん安心して休めると感じたからです。お休み期間が短いと、それに対して引継ぎ工数が重いと思うのですよね。なので、良い制度だと思います。しかし、私のように10日休むだけでは、父親としてほぼ役に立たず、姿勢だけが評価されて終わる気も…。とはいえ、休みを取得して家庭と向き合うことによって自分の価値観に変化が生まれるので、その後の働き方の工夫に必ず生きてくると思います!
 

 

 

 

 

 

菅原:制度ができたことで社内にどのような変化が起こると思いますか?

 

この期間「育児をするぞ」と意気込み休んだところで、家族からは、「素晴らしい」よりも「中途半端」と言われるほうが多いと思います。山本さんの言うとおり、その時間を意識的に取ることで、今後家庭とどう向き合うのかを考える期間になるはず。なので、別名を付けるなら『男性よ、家庭に向き合ってみよう休暇』でしょうか。
 

 

 

 

 

 

菅原:目的はまさにそのネーミングの通りですね。

 

働き方との帳尻合わせも、個々人がどう判断するかだと思っています。会社の制度をうまく活用できれば、仕事以外の時間にバッファが生まれます。そこを充実させることで、「これが自分の生き方であり、生き方の中にある働き方です」って“Work in Life”の実現に胸を張れて、仕事も円滑に進むのならいいじゃないって言えるグループでありたいと思いますし、これがデジタルホールディングスの価値につながることを願っています。
 

 

 

 

 

 

菅原:私達の働き方も世の中の働き方とともにどんどん変わっていくので、新たに制定するこの制度も社員にとってより有意義なものになるように更にアップデートし続けていきたいと思います。

 

 

※記載されている所属・役職等は2022年3月に実施した座談会当時のものです。