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AIの活用で日本の課題に立ち向かう。デジタルシフトと人間の成長が両立できる世界へ

2020.06.30
株式会社SIGNATE 代表取締役社長
株式会社オプトホールディング グループ執行役員 AI事業担当
齊藤 秀 Saito Shigeru
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幅広い業種のAI開発、データ分析、共同研究、コンサルテーション業務に従事。データサイエンティスト育成及び政府データ活用関連の委員に多数就任。博士(システム生命科学)。筑波大学人工知能科学センター客員教授、国立がん研究センター研究所客員研究員。

株式会社SIGNATEが提供する、日本最大のAI開発人材ネットワーク「SIGNATE」。数万人のデータサイエンティストと、AI活用を考える企業をマッチングするだけでなく、AI人材の育成や採用の役割も果たしています。このサービスの誕生の背景には、日本社会におけるAI活用の壁に立ち向かおうとする代表の齊藤秀の想いが込められていました。齊藤が描くSIGNATEと日本の未来に迫ります。

AIエキスパートが足りなくなる時代が必ず来る

私は、自分自身で何かを発明することにはこだわっていません。それよりも、物事が今まで以上に上手くいくような仕組みを作り出して、世の中にインパクトを与えたいという想いが強いですね。

もともと生物のメカニズムとコンピュータに関心があり、それを掛け合わせた領域として、大学でシステム生命科学を専攻していました。その後、IT企業に在籍して製薬企業や大学・公的機関の研究所の支援をしつつ、AIやビッグデータなどの領域も担当するようになり、専門領域を広げて行きました。

特に、新規事業の企画・立ち上げが好きで、様々な製品やサービスに携わってきましたが、安定した組織で新しい技術やコンセプトに取り組むハードルが高い感覚がありました。

そんな中、あるセミナーで講演していた際に、デジタルホールディングスの役員と知り合い、グループ内でビッグデータ活用に注力しようとしていること、テクノロジーを担う組織のトップを探しているという話を聞きました。自分のやりたいことが実行に移せそうだという自由度と、前職よりも経営に近い立場であることに魅力を感じ、2014年に参画を決めました。

やりたかったのは、これからの社会の仕組みになくてはならないような大きな影響を与える仕組みを作ること。当時は、ビッグデータ活用、今で言うとAIが社会を変革するという議論が始まった頃です。企業活動においてもデータ活用やAI技術の活用が重視されていく一方で、そのためのエキスパートが足りなくなる時代が、近い将来必ず来ると当時から確信していました。

そこでデジタルホールディンググループに加わり、以前から構想していた、AI人材活用のためのプラットフォームの開発に乗り出そうと考えました。今のSIGNATEのサービスの元となるものです。この取り組みは、当初ほとんど理解されませんでした。しかし、最初から短時間で大きな成果を出すつもりはありません。数年先を見たときに、必ず必要になるという想いで、積み上げてきた事業戦略でした。

人間が成長できる世界に

そうした取り組みの成果が、2017年に、オープンイノベーションを活用してAI開発、ビッグデータ解析などを行う会社、株式会社SIGNATEの設立に繋がります。主軸となるのは、企業におけるAI人材不足の課題を解決するため、様々な分野のAI技術者が登録できる巨大なプラットフォーム「SIGNATE」の運営です。

まず、企業の課題をコンサルティングしながらAIで解決可能な技術課題にデザインします。最も優れたAIの開発者に賞金を支払うという競技大会(コンペティション)を開催し、世界中の多くのデータサイエンティスト・AI技術者が様々なアプローチで挑み、AIの精度を競い合います。結果、特定のベンダーに依頼するよりも、はるかに精度が高い優れたAIが生まれます。

「SIGNATE」は、企業とデータサイエンティストのマッチングだけでなく、AI人材の育成や、AI人材の採用にもつながるプラットフォームでもあることが最大の特徴です。コンペティションに参加する多くの技術者は、実際の課題にチャレンジすることを通じてスキルを証明し、さらなる技術レベル向上を目指しています。

私たちが見ているのは、既存の市場ではなく、単純な価値ではありません。社会課題の解決と人材育成を同時に達成するエコシステムによる新たな市場を創ることです。教育と人材、ITが融合した市場です。一つの市場で特定のポジションを狙っているわけではないので、競合となる企業もいません。たとえ一つの市場で利益が出なくても、それを別の市場で回収できるのです。あえて競合がいない場所を作り、新しいルールを作っていくのが、私達のやり方です。

AIは今後の社会変革の中心となる技術であり、国家のシステムや私たちのライフスタイルに大きな影響を与えます。そういった技術を扱う会社として、一企業としての利益を追求するのではなく、よりよい社会の実現のために向き合っていきたいと思っています。

AIが人の仕事を奪うというのは誤った認識

先進国の中で日本だけが抱えているのが、人口の問題です。今までは「人口=経済の成長」でしたが、今後、確実に人口が減少していく日本では、その図式を変えていかなければなりません。新しい技術でビジネスモデルを変革する以前に、まずは生産性を上げて、現状の経済レベルを維持する必要があります。AIに仕事を奪われるという話がありますが、そうではなく、住み分けの可能性を考えるべきですね。単純作業はAIで効率化し、クリエイティブな仕事は人間がやる。そういう世界が実現できるはずです。

こうした中で、今SIGNATEが取り組んでいるのはAI技術者と企業とが上手く繋がり、経済が生まれる仕組みづくりです。政府や、大学などの教育機関とも関わりながら、みんながWin-Winになれる仕組み、そんなエコシステムを作っていく。特にエコシステムを持続させるための財源が重要です。教育機関は予算に限りがあり、国家予算に依存するシステムは健全とはいえません。その中で、SIGNATEならどういう役割を果たせるか。近視眼的なビジネスのではなく、持続可能な社会に必要とされる、価値のある仕組みを作っていきたいですね。

SIGNATEが目指すのは、AIなどの技術を活用して社会を効率化すると同時に、人間も成長できる世界です。残念ながら今の日本は、技術者への評価が低く、活躍の場が十分に与えられていない。せっかく才能があっても表現する場所がなければ、それは、社会として大きな損失です。私達はそのような課題を解決すべく、コンペティションの運営をしています。コンペティションでは、行政や企業が抱える課題が常に提供され、技術者は自由にチャレンジできる。チャレンジを通じて、自身の実力が可視化され、正当に評価される世界があり、その後のキャリアにつながります。従来解決が困難であった課題も多数の才能ある人材とのマッチングにより解決につながる確率が飛躍的に上がります。1つの組織で生かしきれない才能もSIGNATEを通じて多くのプロジェクトに参加することにより、デジタルシフトが進み、社会全体の生産性が上がります。まさに、才能のシェアリングです。
 

問を立て、課題を出す人間を育てたい

現在私は、客員教授として大学での教育にも関わっています。それは、10代、20代の若者にこそ、これからの世の中を動かす力があると感じているからです。学生達は皆優秀で、考え方も新しい。若い世代に投資することが最も重要だと思っています。自分の役割は、民間企業に軸足を置きながら、大学や研究機関、国の仕事にも携わって、その橋渡しをすること。大学の専属教授や政府の官僚ではできないことも、今の私の立場ならできることも多いと考えています。

これから必要とされる人材は、社会の変化をつかみ、解決すべき課題を抽出する人間です。課題を解きたい技術者、解く技術者はたくさんいますが、そもそもの問いを立てる人がいない。それは、今まさにSIGNATEが提供している機能だとも言えます。今後そういった人材をどうやって発掘し、育成していくかが、国と一緒に取り組んでいる問題ですね。

自分を動かしているのは、世の中の仕組みを変えたいという想いです。今の社会には、良い面もあるけれど、非効率で評価が曖昧だと感じる部分もある。それなら、誰もが「こうなった方がずっといい」と思える仕組みを作りたいのです。AIに限らず、新しいテクノロジーを使って、その仕組みづくりをやっていきたい。そのためには、お客様も含め、SIGNATEの事業に関わる人や組織の数を増やし、世の中を変えていきたいですね。